なぜ歳を取ったら不妊になる？メカニズムを説明

なぜ歳を取ったら不妊になる？メカニズムを説明

現在、不妊に悩んでいるカップルは7組に1つとも言われています。そもそも不妊ってなに？という疑問から、歳を重ねたら不妊になるメカニズムについて説明します。不妊治療のクリニックを受診する前に、知っておきたいことをここで学んでおきましょう。

そもそも不妊ってなに？

不妊（不妊症）とは避妊をしていないにもかかわらず、一年間妊娠が成立していない状態のことを指します。WHO、日本産婦人科学会のどちらにおいても同様の定義がされています。

不妊は国内では病気として認められていないため、不妊治療は基本的に保険適用外となってしまいます。※ただし特定不妊治療費助成事業として、一部助成金が支払われる場合もあります。
（参考：不妊治療ってなんで保険適用されないの？費用と共に考える）

不妊の原因は、男性側の問題が約24%、女性側の問題が41%、両性の問題が24%、原因不明な場合が11%あるとされています（※WHO調査結果）。
それでは不妊における男性、女性の問題についてそれぞれ説明します。不妊の原因について理解を深めることで、日頃の生活を見直して、妊娠へと繋げましょう。

不妊の男性側の問題

不妊における男性側の問題として挙げられるのが、①勃起不全などの性機能障害、②精子形成が出来ない問題、そして③老化による精子の問題です。

①性機能障害

性機能障害は、勃起不全と射精障害の二つに大別されます。精神的な問題や身体的な問題など原因は様々ですが、薬用治療や専門のトレーニングを受けることで、治療出来ることがあります。性機能障害の方は不妊治療を扱っている専門のクリニックで相談してみましょう。

②造精機能障害

男性側の不妊の多くは精子形成に問題があります。精子形成の問題には、（1）精子の運動がおかしい、（2）精子の形がおかしい、（3）精液中に精子が含まれていないこと、などがあります。これらの原因は染色体の異常や、精巣の機能不全です。気になる方はまずクリニックで精液分析を行ってみましょう。
男性の不妊治療も扱っているクリニックでは、精子に問題があっても不妊治療技術を使うことで子供を授かることが出来るかもしれません。

③老化による精子の問題

精子は泳ぎ方に問題があると、受精が困難になってしまいます。しかし35歳を過ぎると、泳ぎ方の異常な精子数が増加してしまいます。

精子の泳ぎ方が問題となり、男性の30歳が妊力（妊娠を可能にする力）がピークとなるという論文も出ています。また同じ論文の中では、精子の泳ぎ方が問題で、45歳になると妊力がピークの20％も減少するという論文も出ています。
歳を重ねてもビタミンや葉酸を摂取することで、精子形成が改善するという知見があります。
逆に、高脂肪や赤肉などばかりを食べると、精液中の精子に異常が生じ始めてしまいます。
日頃から規則正しい食事を心がけることで、妊娠に繋げましょう。

不妊の女性側の問題

不妊における女性側の問題として挙げられるのが、①排卵などが正常に行われなくなってしまうことと、②卵管が炎症を起こしてしまうことです。

①排卵の問題

排卵はホルモンによって制御されています。先天的な問題だけでなく、ダイエットなどによってホルモンバランスが崩れてしまうと、排卵が出来なくなってしまいます。クリニックでホルモン療法をしたり、日頃の食事でホルモンバランスを整えることで、改善されることもあります。まずは産婦人科医に相談しましょう。

②卵管の問題

クラミジアなどの性感染症になると、卵管周囲が癒着してしまい、卵管に卵子が取り込まれず、不妊症になってしまいます。また、月経痛などで鎮痛剤を多様に服用している方も、卵管周囲が癒着してしまうことがあります。卵管周囲が癒着した方は、卵管に水を通すことで卵子を通れるようにしたり、手術によって改善できることがあります。不妊治療のクリニックに相談してみましょう。

女性が歳を重ねるとなぜ不妊に繋がるのか

女性の場合、歳を重ねると、不妊になってしまう方が多いです。

このように女性の場合、45歳を過ぎると40％も妊娠能力が減少してしまいます。
女性が歳を重ねてしまうと、不妊に繋がってしまう大きな原因は卵子数の減少及び、卵子の質の低下です。

卵子数の減少

女性の卵子の元となる原始卵胞は生まれたときにすべて作られていて、年齢を重ねても新しく作られることはありません。産まれたときには200万個ある原始卵胞は、思春期を迎えたころには30万個程にまで減少してしまいます。その後、月経のたびに約1000個の原子卵胞が消失していきます。この1000個の原子卵胞の内一つが排卵卵子へと成長するのです。

不妊治療の現場では過排卵誘起という特別な治療を行うことで、一度の排卵で30～50個の卵子を取ることが出来ます。この中から良質な卵子を選別し、体外授精を行い、母体に戻して妊娠へとつなげます。しかし年齢を重ねると、原子卵胞の数が少なくなってしまい、過排卵誘起を行っても卵子があまりとれず、良質な卵子を採取することが難しくなります。結果として不妊へと繋がってしまいます。

卵子の質の低下

歳を重ねたことによる不妊の最も大きな原因は卵子の質の低下です。先ほども述べたように、女性の卵子の元となる原始卵胞は新しく作られることはありません。
他の細胞と異なり、その状態のまま、保管される特別な細胞なのです。歳を重ねると排卵された卵子でも質が低下してしまいます。
歳を重ねて卵子の質が低下する原因は、エネルギーを産生するミトコンドリアの数が減少したり、機能が損なわれてしまうことです。普通の細胞でも歳を重ねるとともに、少しずつミトコンドリアの機能は減少してしまいます。
普通の細胞は、細胞分裂をすることで新しい細胞をつくり、ミトコンドリアの機能が低下した細胞を体から捨てることができます。しかし、産まれたときから保管されている原始卵胞は受精するまで細胞分裂が出来ないため、ミトコンドリアの機能は低下したままとなってしまいます。

受精をするときや受精後の細胞分裂の時、多くのエネルギー（ATP）が必要となります。そのため、ミトコンドリアの機能が低下したり、数が減少してしまうと、エネルギーを産生することが出来ず、受精や細胞分裂が行えなくなり、不妊へと繋がります。

まとめ

男性も女性も年齢を重ねると不妊症に繋がってしまいます。しかし、歳を重ねても日頃の生活を改めることで、不妊の時期を遅らせることもできます。まずは食事生活や、禁煙など身近なところから生活を改めて、妊活を始めてみましょう。
また、日頃の生活を改めただけでは効果が認められなかった場合は、なるべく早く専門のクリニックや産婦人科医に相談することをお勧めします。時間は大切です！

参考論文