医者は教えてくれない?過排卵誘起の危険性ー不妊治療

医者は教えてくれない?排卵誘起の危険性ー不妊治療不妊治療

医者は教えてくれない?過排卵誘起の危険性ー不妊治療

過排卵誘起とは、1度の生理周期において、複数の卵子を得ることのできる画期的な不妊治療技術です。
しかし、そんな画期的な技術に危険性はないのでしょうか?

ここでは排卵誘起を検討している方向けに、排卵誘起の危険性を説明します。

排卵誘起とは

排卵誘起とは、ホルモン処理を行うことで1度の生理周期で複数の卵子を得ることができる技術になります。

排卵誘起によって複数の卵子を採取することのできるメカニズムは排卵誘発の仕組みとは?多くの卵子を取るための技術を説明ー不妊治療で説明しています。

排卵誘起における副作用としては
過排卵による多胎妊娠の増加や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の増加などが挙げられます。

排卵誘起によるデメリットを調べても、ほとんどは多胎妊娠の増加とOHSSしか挙げてはいません。
しかし、複数の卵子を採取することによる問題は本当にこれだけなのでしょうか?

排卵誘起による危険性

排卵誘起により生じる危険性を説明した論文を紹介したいと思います。
ここでは特に複数回の排卵誘起により生じてしまう危険性を紹介します。

マウスにおける知見

マウスにおいて、複数回の排卵誘起(ゴナドトロピン様の注射により5回の排卵誘起)を行うと、メスの生殖器官全体で、強い酸化ストレスが発現します。
また、卵巣と子宮において組織学的形態が変化しました(黄体細胞の増加。子宮内膜の厚さの減少)。

排卵誘起による子宮・卵巣組織の変化
(※1改編)

Norml(自然排卵)と比べて、PMSG/hCG X3(複数回の排卵誘起)がUterus(子宮)の子宮内膜の厚さが減少しているのが観察できます。

排卵誘起による抗酸化酵素2-cys prxの発現変化
(※1引用)

排卵誘起を行うと、雌性生殖管(これは卵巣)において抗酸化酵素である 2-cys prx が自然排卵と比べて向上します。
これは、排卵が卵巣における破裂を伴うためであり、排卵する時は活性酸素が発生するためです。
排卵誘起では、複数個の排卵が生じるため、活性酸素を抑えるために、抗酸化酵素の量は増大します。

しかし、複数回の排卵誘起を行うと、2-cys prxは過酸化され不活化されました。
(一番上の列のPrx-SO2/3の増加)

このことから、複数回の排卵誘起では、酸化ストレスによるアポトーシス(細胞死)が雌性生殖管において生じている可能性が示唆されました。

アカゲザルにおける知見

アカゲザルにおいて複数回の排卵誘起(ゴナドトロピン様の注射により5年前に4回の排卵誘起)を行うと、卵巣組織には影響はなかった。
また、採取された卵子の、発生(NOBOX)、成熟(GDF9)、 受精(ZP3)、初期胚発生(Nlrp5,Tcl2)の mRNA レベルに変化はなかったため、卵子に悪影響はないといえます。

アカゲザルにおいて排卵誘起をした際のミトコンドリアの変化
(※2改編)

しかし、卵子を取り囲む異常なミトコンドリアを持つ顆粒膜細胞がみられました。
(左が何もしていない区で右が、複数回の排卵誘起を行った区。右のミトコンドリアの膜が薄くなっている)
顆粒膜細胞ではアポトーシス経路のタンパク質(caspase) が高発現したため、将来的に卵巣機能に悪影響を及ぼす可能性が認められた。

一方問題がないという報告も

ヒトにおいて複数回の排卵誘起(調整卵巣卵巣刺激法により5回の排卵誘起)を行うと、採卵卵子の数に違いはなく、卵子の質にも影響はない(着床率・妊娠率共に変化なし)という報告もあります。

しかし、こちらに関しては卵子への影響しか観察しておらず、卵巣組織などへの影響に関しては観察されていません

まとめ

ここでは、複数回の排卵誘起による危険性を説明しました。
具体的には酸化ストレス向上による生殖器官の機能障害の可能性が示唆されていました。

本来卵子は1度の生理周期で1つしか排卵されないものです。
それを複数個取る技術を何度も行う行為は、危険性を孕んでいるということを念頭においておきましょう。

とはいえ、排卵誘起自体はとても画期的な技術です。
病院の先生がどこまで排卵誘起の危険性について把握しているかは分かりませんが、先生と相談をしながら、技術の恩恵を享受してください。
(※今回見つかった危険性は全て酸化ストレス向上を引き起こすということでしたので、抗酸化物質の摂取による改善も可能性があるかもしれません)

参考論文等

※2論文タイトル;Long-term effects of repeated superovulation on ovarian structure and function in rhesus monkeys
著者;Dong et al
雑誌名;Fertil Steril(2014)
※3論文タイトル;The effect of repeated controlled ovarian stimulation in donors
著者;C Caligara et al
雑誌名;Human Reproduction(2001)

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