ARTのオプションのカルシウムイオノフォアってなに?卵子活性化から考える

ARTのオプションのカルシウムイオノフォアってなに?卵子活性化から考える不妊治療

ARTのオプションのカルシウムイオノフォアってなに?卵子活性化から考える

ARTのオプションのカルシウムイオノフォアってなに?卵子活性化から考える
体外受精や顕微授精で、「カルシウムイオノフォア」というオプションを見たことはないでしょうか?

でも、実際カルシウムイオノフォアと聞いても、何のことかよくわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、カルシウムイオノフォアがどのように働き、どのような役割を持つのかを説明します。

ARTを行っている方、行おうと考えている方の中で、カルシウムイオノフォアについて気になる方やカルシウムイオノフォアを行おうと検討している方はご参照ください。

卵子の活性化

カルシウムイオノフォアについて説明するためには、卵子の活性化について理解をしなければいけません。
卵子の活性化とは、具体的には

①表層顆粒の放出
②減数分裂の再開

のことを指します。

第一減数分裂前期で細胞周期が止まっていた卵子は、成熟すると第二減数分裂中期まで進行します。
この過程がないと卵子は精子と受精することができません。
(注 精子と受精できるように体外で培養する技術をIVM(In Vitoro Maturation)という)

その後精子が卵子と膜融合することで、卵子は①表層顆粒を放出し多精拒否機構(他の精子が卵子に入らないようにする働き)を起こし、更に②減数分裂が再開し、その後の胚発生が生じます。

つまり、卵子の活性化とは、精子との受精後に胚発生するのに必要な機構といえます。

卵子活性化のメカニズム

卵子活性化のメカニズム

こちらの画像は、受精後の卵子活性化における細胞内シグナルを示しています。
受精後の卵子活性化のメカニズムについて順番に説明していきます。

①精子が卵子と融合するとPLCζが卵子内に放出される。
②PLCζにより、PIP2(ホスファチジルイノシトール2リン酸)が、IP3(イノシトール3リン酸)とDAG(ジアシルグリセロール)に加水分解される。
③IP3は小胞体膜上のレセプターと結合し、小胞体に蓄えられたカルシウムイオンが受精卵内に放出される。
④放出されたカルシウムイオンは、小胞体膜上のカルシウムイオンレセプターと結合する。
⑤さらにカルシウムイオンが小胞体から受精卵内へと放出される(カルシウムオシレーション)。
⑥DAGはPKC(プロテインキナーゼC)を活性化する。活性化されたPKCにより表層顆粒は放出される。
⑦活性化していない卵子ではMPF(卵成熟促進因子)の活性が高い状態で維持されている。MPFの活性維持にはCSF(細胞細胞分裂停止因子)が働いている。カルシウムオシレーションはCSFを分解する。CSFが分解されたことでMPFは活性状態が減少し、減数分裂が再開される。

つまり、卵子の活性化には、卵子内におけるカルシウムイオンの上昇が必要不可欠となります。

カルシウムイオノフォアの役割

カルシウムイオノフォアは細胞膜におけるカルシウムイオンの透過性を向上させます。
つまり、受精卵が細胞外からカルシウムイオンを取り込みやすくなるのです。

顕微授精では精子と卵子の膜融合が生じないため、PLCζが卵子内に放出されず、卵子活性化がうまくいかないことがあります。
また、卵子自体がうまくカルシウムオシレーションを引き起こすことができず、活性化が生じず、減数分裂が再開しない場合もあります。

古くは、カルシウムイオンを直接受精卵に注入する方法などが取られていました。

しかし、近年では、カルシウムイオンを注入する際の卵子へのダメージなどを考慮した結果、カルシウムイオノフォアによって卵子活性化を促すのが世界的な主流となりました。

まとめ

以上、この記事ではカルシウムイオノフォアの役割について説明してきました。

まとめると、

受精後卵子は活性化する必要がある。
卵子の活性化にはカルシウムイオンの上昇が必要である。
カルシウムイオノフォアは卵子内のカルシウムイオンの上昇を促す。

となります。

今後、ARTにおけるオプションとしてカルシウムイオノフォアについて検討している方はご参考ください。

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