デマに気を付けて！妊活・不妊治療の嘘8選

妊活や不妊治療は非常に難解な学問分野です。
中学高校生物で学ぶことはなく、大学教育においても専門分野を履修して初めて学ぶことができます。

そのため、妊活を始める際、多くの方がネットを通じて情報を収集することになるのですが、ネットには多くの嘘がはびこっています。

こうなってしまった要因の一つは、妊活や不妊治療にかかる費用は高額であることです。
商材が高額なため、子供が欲しいという感情につけこみ、「根拠のないサプリメント」などを販売する悪質な業者が後を絶たないのです。
（例：朝日新聞；「授かり率、190%高まる」　妊活サプリが不当表示）

このような商材を売るとき、嘘を紛れ込ませて情報を発信するため、ネット上には嘘が蔓延してしまいました。
加えて現在では、こういった業者の情報を利用して、別の業者やサイトが誤情報を発信するという大変危険な構造になっています。

そこで、この記事では、妊活や不妊治療中の方向けに、ネットなどに広がっている妊活や不妊治療に関する誤情報について科学的に説明させていただきます。
目から鱗なことも多いかと思いますが、ぜひ一読してみてください。

嘘①葉酸は妊娠率を上げる

最も有名かつ多くの人が勘違いしている情報は、「葉酸は妊娠率を向上させる」という内容です。

皆さんもいろいろな場所において「厚労省が認めた成分」と記された葉酸配合サプリメントの広告を見てきたことでしょう。

これは嘘です。

厚労省は葉酸を

のために摂取するよう呼び掛けているのです。
（厚労省；葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果）

そのため、葉酸が妊娠率を向上させるという情報は厚労省からは出ていないのです。

但し注意してほしいのは葉酸を飲まなくていいということではありません。
むしろ、産まれてくる我が子の神経異常を抑えるために、
子供が欲しい人は全員飲むべきものなのです。

嘘②妊活中は運動してはいけない

これもよく聞きます。
曰く、運動を行うと酸化ストレス（ROS）が向上することで、不妊に繋がるという論理です。

まず、第一に体内では常に酸化ストレスが造られており、かつ体内には酸化ストレスを抑制する機能があります。
そのため運動したらすぐに酸化ストレスが異常になるというわけではありません。

第二に、運動などを行うと、酸化ストレスは発生しますが、ミトコンドリアの機能が向上し、抗酸化機能が向上します。
つまり、運動は一時的には酸化ストレスは向上するかもしれませんが、中長期的に見たら抑制的に働くのです。

第三に、運動はむしろ妊娠に繋がりやすくなります。
男女問わず、運動すると妊娠率は向上しやすくなる。
（特に女性では）肥満は不妊の大敵であり、肥満状態は妊娠率低下だけでなく、子供の神経異常を引き起こしてしまいます。
（参考；母体の肥満は女性不妊を引き起こし、胎児の発達異常を引き起こす）

そして最後に、酸化ストレスは必ずしも害悪なものではありません。
酸化ストレスの過剰な抑制はむしろ妊娠率が悪化したという知見さえあります。

以上のことから、妊活中の運動はむしろ推奨されるものなのです。

嘘③行為後に逆立ちすると妊娠率向上する

昔ながらの考えだと思うのですが、膣に入った精液をなるべく出さないようにということなのだと思います。

ですが、そもそも膣に入った精子は、子宮頸管を通ったのち、子宮の蠕動（ぜんどう）運動によって卵子まで運ばれます。
そのため、体内に入った精子は逆立ちしなくても卵子まで運ばれます。

まあ、卵子まで精子運ぶのに逆立ちしなければいけなければ、半日～1日以上逆立ちしなければいけなくなるので無理な話なんですよね。

嘘④妊活中はコーヒーを飲んではいけない

これもよく聞きます。
というのも、2008年にコーヒーを飲むと流産に繋がるという論文が発表されたからです。

しかし、近年になり、コーヒーを摂取すると、人工授精の成功率は向上したという論文や、不妊治療には影響しないという論文が続々と発表され始めました。

そのため、近年ではコーヒーの摂取は、妊活中はあまり関係ない（むしろよいのではないか？）という考え方になっています。
しかしながら、カフェインの過剰摂取はよくないので、飲みすぎにだけは気を付けましょう（1日2－3杯まで）。

嘘⑤ART（高度生殖治療）は異常児が産まれる

不妊治療を知らない50,60代の方がよく言う内容ですが、全くの嘘です。
（不妊治療中に両親や、義両親に言われるという方が多いみたいです）

高度生殖医療で異常児が産まれるという知見はこれまで報告はほとんどありません。
（近年になり、胎盤が肥大化するという知見や、子供が太りやすくなる可能性が指摘され始めた程度です）

「高齢になるとダウン症のリスクが高くなると」
いうこととごちゃ混ぜにして勘違いしている方が多いため、多くの方が勘違いされているのだと思います。

誤解してほしくないのは、ARTではないと子供が産めない方もいるし、世界各国でARTによる子供は産まれています（800万人以上）。
さらに、体外受精は妊娠率向上に有効な方法であるという論文はきちんと報告されています。
（参考；妊活の夫婦必見！不妊症の人への体外受精（IVF）の有効性を調査した！）

異常児が産まれるというデマに騙されないでください。

嘘⑥不妊の原因は中絶

これも嘘です。

お年寄りに多い考えなのですが、不妊の原因は様々で特定できないからこそ治療が難しいのです。

近年では、デヴィ夫人が2020年にテレビ番組で不妊の原因は中絶と言って大炎上しました。
（主に不妊治療経験者や不妊治療中の方から猛バッシングを受けました。まあ、嘘をついて謝罪をしなかったため、仕方ないのですが）
この際、中絶をしていないにも関わらず不妊で悩んでいる方が多数いらっしゃいましたし、産婦人科医によっても否定されました。

不妊の原因は中絶だけでは決してありません。

嘘⑦コロナワクチンは不妊・流産に繋がる

コロナワクチン接種に関しての嘘は様々です。
（5Gに操られるとか、身体が磁力を持つとか本当に多いです）

そのうちの一つに、
コロナワクチンは不妊・流産のリスクが高くなるというものがあるのですが、実はこちらもデマです。

日本産婦人科感染症学会・早川智副理事長が以下のようにコメントしています。
「動物実験で人に使う10倍以上の量をマウスとかラットに打って調査をした研究があるんですけれども、全く妊娠能力にも胎児の発育にも影響がありませんでした」
「アメリカでは3万人以上の大規模な調査した研究があるんですが、ワクチンを打ったから流産しやすいとか、早産しやすいっていう報告はありませんでした。新しい変異ウイルスが感染力も重症度も高いと言われていますので、これが今後、広がっていくことを考えると打った方がいいと考えています」

という風に妊娠能力への影響はないと明言されています。

さらに、妊娠中であっても、流産への影響などは全くなかったことが報告されています。
（※参考文献「N Engl J Med 2021; 384:2273-2282」）
※胎盤形成に関わるシンシチンに障害を与えるという記事もデマであったことが分かっています。

2021年8月11日には、NHKによりワクチン不妊のデマは、一部の少数のアカウントから発信されたことにより拡散されたという記事も発表されました。
（新型コロナワクチン “不妊デマ”はなぜ拡散し続けるのか？）

BBCもワクチンが不妊に繋がるという記事はでたらめであると発表しています。
（新型ウイルスワクチン、妊娠にまつわる偽情報をファクトチェック）

また、最近（2021年8月）には、妊娠中授乳中の方へのワクチン接種が子供へ抗体付与することもわかっています。
（妊娠中にワクチンを接種したら赤ちゃんが抗体をもって生まれてきた）

（※mRNAをインジェクションするノックダウン実験などでは胎児が産まれる。さらに、高校生物で習うはずの、DNA→mRNA→タンパク質という不可逆的なセントラルドグマの流れからもRNAがDNAを攻撃して不妊になるということは到底考えにくい）

嘘⑧子供の産み分けは可能

男女を産み分けることは可能なのでしょうか？
結論から申しあげると、現在の日本の法律上は不可能です。

しかし、一部の不妊治療クリニックやネットショップなどでは、産み分けゼリーの販売や産み分け指導などがなされています。
一応説明されている内容としては、
X染色体は酸性に強く、Y染色体はアルカリ性に強いため性行為のときに膣内に産み分けゼリーを入れると膣内が酸性となり、酸性に強いX染色体を持つ精子が受精しやすくなります。

ですが、これらに関して科学的根拠はありません。
例えば現役の産婦人科医である宋美玄(そん みひょん)医師は、男女の産み分けは不可能だと断言しています。
（男女の産み分け、医師が「不可能」と断言）

勿論PGTによる着床前の性別判断を行い、胚を選別して子宮へと移植すれば技術的には可能ですが、現状の日本の法律では不可能となっています。

まとめ

以上、妊活・不妊治療に関する嘘を紹介してきました。

これらの嘘を信じてしまっていた方には目から鱗が落ちるような気分かもしれませんが。。
妊活や不妊治療は非常に難しい学問で、嘘に関しての整合性を正せる方はあまり多くありません。
（客観的に判断する方法としては、原著論文を読むことが一番効果的なのですが）

どうか悪質な情報に騙されることなく、出産に繋がってほしいと思います。