精子が正常に発達するには、適切なオメガ3脂肪酸環境が必要ー妊活

男性不妊

精子が正常に発達するには、適切なオメガ3脂肪酸環境が必要ー妊活

サバや大豆などには、DHAを始めとしたオメガ3脂肪酸が含まれています。

ここでは、精子が発達するためには、適切なオメガ3脂肪酸環境が必要であるという論文を紹介いたします。
尚この記事は
「Acyl-CoA synthetase 6 regulates long-chain polyunsaturated fatty acid composition of membrane phospholipids in spermatids and supports normal spermatogenic processes in mice」
の論文を解説しています。

精巣にはオメガ3脂肪酸が多く存在する

精巣にはDHAやDPAなどのオメガ3脂肪酸が多く存在しています。

脂肪酸は細胞内に入った後、アシルCoAに変換されて膜リン脂質に取り込まれます。
DHAやDPAをアシルCoAに変換するには「長鎖アシルCoA合成酵素6(Acsl6)」という酵素が必要です。
このAcsl6は精巣において強く発現しているため、筆者たちはAcsl6が精子形成に関与しているのではないかと仮説を立てました。

ACSL6欠損マウスの作成

筆者たちの研究グループは、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)を行いACSL6のノックアウトマウスを作出しました。

ACSL6欠損マウスは不妊になる

筆者たちのグループはACSL6欠損オスマウスと、性成熟を起こしたメスマウスと交配させました。

すると、ACSL6欠損マウスからは、マウスは一匹も生まれることはありませんでした。
(WT×WTでは9匹試したところ、23回の交配、129匹の子が生まれたが、ACSL6欠損マウス×WTでは、交配数0、子0という結果となった)

加えて、ACSL6欠損マウスの精子を利用してIVF(体外受精)を行ったところ、まったく受精することはありませんでした。

また、ACSL6欠損マウスの精子に、卵母細胞との融合能力があるかどうかを確かめるために、卵母細胞の透明帯を除去し、IVFを行いました。
通常マウスでは100%の融合を果たしたものの、ACSL6欠損マウスでは約5%しか融合せず、融合能力に重大な欠陥があることが分かります。

ACSL6欠損マウスは精子異常が生じる

ACSL6欠損マウスの精巣上体(精子が含まれる)を形態評価したところ、ACSL6欠損マウスでは、精子の数が著しく減少していたことが分かりました。

加えて、精子の形態を観察したところ、精子の頭部は異常な形態をしていることが分かりました。

精子細胞にアポトーシスが生じる

精子形成に異常が生じる原因を調べるために、精子に分化する前の伸長精子細胞の形態を観察しました。

すると、アポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こしている状態に近い形態が観察されました。

そこで、伸長精子細胞をTUNELと呼ばれるアポトーシスを検出する実験で観察したところ、アポトーシスを検出することができました。

実験まとめ

今回の論文では、精子形成におけるオメガ3脂肪酸の必要性を調べるために、ACSL6欠損マウスを作出し、その評価を行いました。

すると、ACSL6欠損マウスでは、精子形成に異常が生じ、男性不妊に繋がることが分かりました。

このことから、Acsl6は精巣におけるオメガ3脂肪酸をアシルCoAに変換し、正常な精子形成を行う上で、必要不可欠な酵素であることが分かりました。
また、このことからも、正常な精子形成を行うためには、適切なオメガ3脂肪酸環境が必要であることが分かりました。

オメガ3脂肪酸と男性不妊の関係を調べた他の論文が知りたい方は、
まとめサイトであるDHA/EPA/DPA(オメガ3脂肪酸)は男性不妊に関係する?-妊活を参考にしてください。

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参考論文



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